2007年06月26日 フラっと、ボラット
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とあるレストランで知人と食事していたら、「ねぇねぇ、『ハグ』だったか『メグ』だったか...って知ってる?」と訊かれて困惑してしまったtibです。よくよく話を聞いてみると、どうやらそれは「ビリーズ・ブート・キャンプ」の事らしいんですね。「ハグ」だか「メグ」だか...は、その略称だか別名なんだそうです。...そういえばこれだけ長い名前なんですから略称があっても良さそうな物です。しかも流行り物には必ずと言っていいほど略称とか別名がいつの間にかつけられてしまうのに、なぜかビリーズ・ブート・キャンプを略称で呼んでいる人は見たことがありません。でも、私がたまたま知らないだけなのかもしれません。すると知人は店の人にも訊き、店の人は厨房の人のみならず他のお客さん達にまで訊き、最終的には店全体がその話題で持ちきりになってしまいました。...で、結局分からずじまいです。今のところ信憑性の高いのは、テレビで紹介していた「カニ(←DVDの中でビリーさんが連呼する『count it』がそう聞こえる)」と、ビリーズ・ブート・キャンプの前身として数年前にアメリカでヒットしていた「タェボ(←TaeBo。テコンドーとボクシングを組み合わせた造語)」なんですが、知人は「ア行・カ行で始まる言葉じゃなかった」「カタカナ2文字だった」と、頑として譲りません。思い出せないくせに。どなたか、知ってる方いますか?
さて、映画を見てきました。「ボラット 〜栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習〜」 という映画です。アメリカの映画で、内容は「カザフスタンからアメリカの文化を学ぶために派遣されたボラット氏が、様々な文化の違いにぶつかっていく」というものです(ただし、このボラット氏はカザフスタン人ではなく、本当はイギリス人のコメディアンです)。去年の秋頃からいろんな意味で問題作と言われていました。それが先月から日本でも公開されるということで、一応気にはなってはいました。ただ、レビュー記事を見る限り、私の印象は
あれは、私の中では「イギリスの笑いをアメリカに持ち込めるか」という実験です。アメリカ人の反応を見て楽しめるかどうかがポイントな訳ですが、アメリカで起きていた話題は映画の内容その物よりもむしろ、映画でダシに使われた一般人が、コメディアンが映画を作っていると知らされないまま次々に裁判に訴えたというサイドストーリーです。その部分は映画の中では語られていないでしょうから、映画本編よりもレビュー記事をいくつか読めば十分かと...、というのが私の印象です。これが、一般人が裁判に訴えていく過程を追うドキュメンタリーだったら観に行くかも知れませんね。
でした。↑の文章はこの映画を見に行くかと訊かれて、その返事として書いたメールの抜粋です。先月上旬のことでした。...というわけで、私はこの映画を見に行くつもりはなかったんです。このキャンペーンを知るまでは。
『ボラット〜』毎週月曜日“ヒゲ割引”あり!
上映期間中の毎週月曜日、口の周りにヒゲのある方で、
受付窓口にて「ヒゲ一枚」もしくは「ヒゲ割引」をお申し出いただくと、
当日料金を¥1,000に割引き!
(つけヒゲもOK!女性も是非!)
つけヒゲつけて「ヒゲ1枚」というだけで料金が1000円になるんですよ? 1000円なら行ってみてもいいと思いませんか? というか、窓口で「ヒゲ1枚」って言ってみたくなりませんか? ...はい、あれだけシビアに映画の内容について語っていたのに「ヒゲ1枚」の一言にすっかり舞い上がってしまいました。
で、観ました。全体を通しての感想を先に書くと、「私が観てきた全ての映画の中で1位・2位を争うほどの最低の映画」です。レビュー記事を読むだけでは分からなかった発見がいくつかありました。
- イギリス人のコメディアンが自身のギャグで一般人に「ドッキリカメラ(←例えが古いですけど分かりますか?)」的なアプローチを仕掛けてその反応を楽しむ映画ではなく、むしろ初期の「電波少年(←これももはや例えが古いですけど)」的な、社会規範に反する行動に街の人達がどこまで耐えられるかを見てあざ笑う...に近い物でした。
- ポスターなどに使われている絵のほとんどは、ほんの一瞬出てくるだけで話のストーリーとはまったく関係ありませんでした。
- ただひたすら一般人への仕掛けを続けるだけの映画かと思えば、露骨な性描写・偏見に満ちた特定宗教の批判・偏見に満ちた人種差別・偏見に満ちた女性差別など、現在アメリカでタブーとされる(でもギャグとして頻繁に使われる)事を、余りに露骨に、執拗に続けていて、頭の中では「これはギャグのつもりでやっているんだ」と理解していても許容しがたいレベルにまで踏み込んだ事をしていました。
- 後半は、それまでやりたい放題だった主人公が改心していく...というストーリーがあるのですが、前半が余りにやり過ぎだったためか、本当に改心したように見えない。実際エンディングでは改心していないというオチが出てくるんですが、そこはギャグ映画ということで認めるにしても、改心していくシーンがいかにも嘘っぽいというか、ストーリー自体が取って付けたような、とってもチープなものに感じてしまうんですね。
- 前半で、いろんな仕掛けをされた一般人の反応がなんだか嘘っぽいんです。仕掛けが過激になればなるほど、一般人のリアクションがリアルに見えなくて、ヤラせ臭がスクリーン一杯に満ちあふれてきます。「電波少年だったら同じ事をやっても周りの人達はもっと違うリアクションをしていたろうに」と思います。
例えば、ちょっと想像してみて下さい。あなたはエレベーターの中にいます。そこに全裸の男性が2人、入ってきます。彼らは気まずそうな表情をしながらただ立っているだけで、あなたに話しかけるでもなく近づこうとするでもなく、隠すべき所を隠そうともしません。この状況であなたならどうしますか? で、もし、エレベーターの中に入ってくるのが全裸の男性2人とビデオカメラを構えた人の合計3人だったら? あなたの反応は先ほどとまったく同じでしょうか? 少しでも違いが出てきますか? 私だったら確実に違う反応をします。全裸の人よりもカメラマンを意識します。「あんた何撮ってんの!?」とか叫ぶでしょう。カメラマンを意識してますから当然カメラ目線(もしくはカメラマン目線)になります。それがないんです。あたかも全裸の男性が2人だけで入ってきたかのようなリアクションを皆がしてるんです。街角での仕掛けならカメラは遠くから物陰に隠れて、気づかれないように撮ることもできるでしょう。でも場所はエレベーターの中です。壁に反射してカメラマンの姿もビデオカメラも映り込んでいます。隠し撮りではないことがよく解ります。なのに誰もカメラに対して反応しない。その辺が妙にヤラセ臭いんですね。
ヤラセだったら、訴訟なんか起きるはずがありません。恐らく訴訟騒ぎ自体がこの映画のキャンペーンの一環(訴訟なんか誰もしていないのに全米で訴訟が起きているかのような報道をしている)か、ヤラセとそうでない物が半々なんでしょう。いずれにせよ、物語としてはストーリーの展開に無理と無駄が多すぎる、ひたすらドッキリを仕掛けていくドキュメンタリーならヤラセ臭が強すぎる、ただ単にきわどいギャグを追求したかったのなら後半のストーリーは全くの蛇足...と、どう解釈しても中途半端なんです。
悪いこと言いません、この映画は見に行くだけ時間とお金の無駄です。...え? 私の言ってることが信用できない? え? 私の言うことを聞いて逆に興味がわいてきた? あ、そういう方々には超お勧めの作品です。どうぞどうぞ。
いつまで経っても埒があかないような人ではあるんですが。
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これまでに寄せられたコメント
わたしの周りでは普通に「ビリーさん」ですが…
(友人達がぞくぞくと入隊ちう♪です(⌒∇⌒))
そうか、愛称があってもいいですよね(^○^)
私は「3980円」になったら入隊しようかと思いますが…
(そう思ってる時点で、オレは痩せられないと思う★)
映画は内容はわからなかったけど
「ひげ」が欲しくなりました(*´∇`*)
「ひげ」つけたら人生かわるかも、って思ったりして〜〜〜♪
そういえば、昔は「ひげ萌え」でしたねぇ〜(*/∇\*)キャ
By きむ*にょんにょん : 2007年06月26日 21:31
>「私が観てきた全ての映画の中で1位・2位を争うほどの最低の映画」です。
>悪いこと言いません、この映画は見に行くだけ時間とお金の無駄です。
あは〜、そこまで言い切りますか?
なんだかマッサージ店の時といい、私のお節介が裏目に出て2連敗という感じがしておりますが、最悪でも1位とつけばたいしたものです。 でも今年のアカデミー賞ではコメディー・ミュージカル部門の主演男優賞受賞してるんですよね、ラジー賞でなくて^_^; 映画館にはいかなくてもDVDでなら握手身振り(基、悪趣味ぶり)を見ても良いかなという気がしております。
>(つけヒゲもOK!女性も是非!)
tibさん勇気あるなぁと思っていたら、渋谷の女子高生が大挙してつけヒゲ姿で映画の紹介記事に写っておりました。 みんなでやれば怖くない?
By おぱーる : 2007年06月27日 17:35
きむ*にょんにょんさん:
> 映画は内容はわからなかったけど
はい、映画の内容がご理解頂けなかったのは私の表現力のつたなさが原因ですが、今回はキッチリ表現しきるのも憚られそうな物だったので、敢えて具体的な表現を抑えております。ご了承下さい。
> そういえば、昔は「ひげ萌え」でしたねぇ〜(*/∇\*)キャ
で、今は?
おぱーるさん:
> 私のお節介が裏目に出て2連敗という感じがしておりますが
あ〜、敢えて名前を伏せていたのに。
> 今年のアカデミー賞ではコメディー・ミュージカル部門の
> 主演男優賞受賞してるんですよね
ま、アカデミー賞には毎年出来・不出来がありますから。きっと、同じ所にノミネートされていた方々は「なんでコイツに負けたんだ?」と理解に苦しむことでしょう。
By tib : 2007年07月17日 02:21