2006年07月22日 人間万事・塞翁が馬
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学校はもう夏休みに入ったというのになかなか梅雨が明けませんね。先日実家に帰ったら、ほんの数日入らなかっただけの部屋がカビだらけになっていて、1日がかりで掃除したtibです。それはもう、緑の畳が青いカーペットのようになっていて、知らずに歩いた時の感触ったらもう...。畳屋さんを呼び出して診てもらったところ、「新しい畳は水分を含んでいるからカビが生えやすいんですよ」とのこと。え〜、十分乾燥させた畳表を使うものじゃないのぉ? よく「畳となんとかは新しい方がいい」なんて言葉がありますけど、あれは嘘ですね。
さて、今回は「人生、何がどう転ぶか分かった物じゃない」という話です。
以前tiblogで、友人が旅行記を出版したという話を書きました。無名で、生まれて初めて書いた本で、出版社も宣伝に協力してくれないという逆境の中で、友人は自分の本を読んでもらうべく努力していました。
友人はまず、近所の本屋さんを回って自分の本を仕入れてもらうよう頼みました。ですが、無名な人の本なんてそう簡単には仕入れてもらえません。やっとの事で仕入れてもらっても、1週間くらい売れずにいると容赦なく返品されてしまいます。出版社は、一度返品された本は「キズ物」扱いして更にどこかの本屋に卸そうともしてくれません。
友人は次に、地域のコミュニティ誌で紹介してもらえないかと、役所へ向かいました。そこでもむげに断られたのですが、報道関係者が待機する「記者クラブ」にサンプルの本を置かせてもらう事ができました。...とまぁ、普通ならここで終わるんでしょうがそうはいきませんでした。数日後、発行部数ベスト3に入る大新聞から取材の申し込みがあり、地方版のページではありましたが1ページの4分の1ほども占める大きな扱いで紹介してもらえました。やっぱりマスコミは影響力が違います。その記事を読んだ学校関係者から「講演会を開いて欲しい」と頼まれるわ、ラジオ局から「うちの番組に出演して欲しい」と頼まれるわ、まるで「時の人」扱いです。ラジオ番組は生放送です。打ち合わせも適当に生トークがいきなり始まるのですが、無事こなし、再度出演依頼を受けるほどの好評を得ました。
友人は、本のチラシを近所のカフェに置かせてもらっていました。それを目にした人から連絡があり、会ってみたらすっかり意気投合してしまいました。...とまぁ、普通ならここで終わるんでしょうがそうはいきませんでした。この人は地元の市議会議員のタウンミーティングに顔を出した事があるというので、特に市政に興味があったわけでもないのにちょっとついて行ってみる事にしました。ところが、そこで見た市議の不甲斐なさ(まるで取り巻きの人達の操り人形のように見えたそうです)に腹を立て、散々文句を言っただけでは物足りず、後日その市議と2人で会う時間を作らせて、延々説教をして、ついにはその市議を泣かせてしまいました。...その物怖じしないトークが評価されたのでしょうか、しばらくしてその市議から連絡がありました。「地域のお祭りの今年の司会をして欲しい」。どれだけ人材が足りていないのか知りませんが、ほんの数回しか顔を合わせていないのになぜいきなりそんな大役を指名してくる? 司会なんてした事ないのに。2日で数10万人で賑わうという大きなイベントなのに。...それでも友人は「私の本の紹介をさせてもらえるなら」と引き受けてしまいました。
友人は2月の出版記念パーティの際、東京でも営業しようと考えて、旅行記で取り上げた国・チュニジアの大使館を訪れていました。アポイントなんて取っていません。まったくの飛び込みです。普通なら「面倒な奴が来た」で終わってしまうものですが、たまたま暇だったのか、大使秘書に話を聞いてもらう事ができました。たまたま、いいエピソードばかり書いている国だったので、大使も大喜びでした。...とまぁ、普通ならここで終わるんでしょうがそうはいきませんでした。後日、友人はその大使館が主催するレセプション(かなり正式なパーティ)に招待されました。全く訳が分からないまま行ってみると、自分の目の前には福田康夫元官房長官、横にはチュニジア大使、ちょっと離れたところには小池百合子環境大臣、3つ前の席には森前首相が座っています。完全に場違いです。とても「私の本買って下さい」なんて宣伝できる状況ではありません。どうぞご歓談ください...なんて言われたところで、誰と何を話せばよいのやら。バックパッカーとして1回旅しただけなのに。旅行記書いて飛び込み営業を1回しただけなのに。
...ちょっとスケールの違うこの話、実はまだ終わりません。
さっき書いた「お祭りの司会」を引き受ける条件として、本の宣伝をさせてもらう事にしました。ちょっとしたブースを作ってもらって即売会ができるようになったのはいいのですが、せっかく作ってもらったブースに数冊本を積み上げているだけでは殺風景です。何かもう少し飾り付けが欲しいところです。しかも友人は司会に徹しなくてはならないので、直接ブースに立って本を売るなんてことはできません。誰か手伝ってくれる人が必要になってきます。どうしようか悩んでいたら、先ほどの大使館の職員の方が、「手伝いに行きましょうか?」...しかも、チュニジアの観光名所の写真やら、物産品なども持ってきてくれると言うではありませんか。たかだか、市のお祭りですよ? そこにチュニジアの大使館が後援? もとは個人の貧乏旅行だったというのに。
私は学生の頃、先生から「チャンスは獲りに行け」と言われていました。今見えているチャンスはほんの些細な事かも知れないけれど、それがどう大きく化けるかはそのチャンスを手にしてみないと判らないんだから、と。振り返るといろんな所でみすみすチャンスを逃していたり、ハズレを引いてしまったりしている私ですが、この友人の、出版からたった半年でこれだけの展開を目の当たりにしていると、単に運がいいの一言では済まされない物を感じます。