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2006年08月21日 一寸先は闇

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連日の暑さから逃避するために、頂いたメロンを一口大に切ってタッパーに入れて冷凍庫へ入れて、凍ったところでかき氷器にかけて、「これが本当の氷メロンじゃぁ」と自己満足に浸っているtibです。当然ながら記憶にある氷メロンとは似ても似つかぬ味でした。他にもキウイ、パパイヤ、マンゴーなども。

さて、先日のtiblogで「緑内障の恐れがある」と脅されましたが、身に覚えのある私としては癌の疑いよりもリアルに感じられるので、再検査(9/6)までちょっと落ち着かない日々を送っています。緑内障って、今はそれほど酷くなる事はないとは言うけれど、進行を遅らせるだけで治す方法はまだ確立していませんし、目の病気なのに本人が気づいていないうちに進行するので、ある日気づいたら失明していた...なんて事にならないかと思うと気が気でなりません。目が見えなくなるってどんななんだろう? 今まで視覚障害者にもアクセスしてもらえるwebサイトづくりを意識してはいたものの、自分がそうなるなんて考えた事はありませんでしたし。

というわけで行ってきました。「Dialog in the Dark」。...いや、別に視覚障害の予行演習のつもりで行こうと決めたワケじゃないんですけどね。緑内障の疑いを掛けられるずっと前にチケットは買ってありましたし。えーと、Dialog in the Darkというのは要するに、世界中のあちこちで行われているイベントで、真っ暗な中に入ってみよう、というものです。暗闇の中のガイド役として、視覚障害者の方が付きます。実はこのイベント、去年もやっていて、行ってきた知人が強烈に勧めるものですからじゃぁ行ってみようかと感化されたものの、前売り券は完売。当日券も毎日電話を掛けていたのに全然取れないくらいのプラチナチケットで、泣く泣く諦めていたんです。そんなわけで、今年は入念にチケット情報を集めて速攻で取りました。

会場に行くと、まず手荷物を預けさせられます。ポケットに入れてあっても携帯電話や腕時計など、光る物・音の出る物は預けさせられます。ミュールやハイヒールで来た人はスニーカーに履き替えさせられます。接地面積の多い履き物で体験してほしいということだそうです。地面の感覚を感じ取ってほしいらしいので接地面積が多くても厚底ブーツもダメなんでしょう。

私の組(8人)が揃ったところで係の人に誘導されて、先へ進んでいきます。進むたびに少しずつ暗くなっていき、視覚障害者が使う白杖を渡されます。この時点ではやっと物の形が解るかな? というくらいです。怖い物見たさ(見えないけど)で他の人より先を行ってると、...ん? 何かあるぞ? おそるおそる手を伸ばしてみると、「あ、すいません」!!先頭を進んでいると思っていたのに人が立っていたのでビックリしてしまいました。この方が今回の私達のガイドでした。簡単に全員の自己紹介をして、とにかく暗闇なので声を掛け合う事を意識して下さい、と注意を受けて、いよいよ真っ暗闇の中へと入っていきます。

頭では解っていたのに、本当に何も見えません。1歩踏み出すのがとても勇気の要る事なのです。頼りは白杖の感覚と周りの音だけです。...嘘です。白杖なんてろくに使えません。とにかく手を伸ばして、壁を伝って歩くのが精一杯です。室内だからこれで何とかなりますが、屋外だったら情けない事に1歩も進めないでしょう。なのに、なのに。ガイドの方は

「はい、こっちですよ〜」
「あ、そっちは足場が悪くなりますから気をつけて」
「皆さんちょっと小さく固まりすぎですね。もうちょっと広がってもらえますか?」

...あなた本当に視覚障害者ですか。暗視スコープでもつけてるんじゃないんですか?

しばらく行くと暗闇にも慣れてきて、白杖の感覚を頼りに歩けるようになってきました。もちろんそれだけじゃなくて足の裏から伝わってくる感触や周りの人達の声が大きな手がかりになります。

「はい、ココにドアがありますよ〜。頭気をつけて。」
「すいません、ココって言われても解らないですぅ」
「じゃぁちょっと手を貸して...あなた、手はどこですか?」
「ココです、ココ」
「あなたもココって言ってるじゃないですか」
「じゃぁこれならどうです? (と、その場で手を叩く)」
「あー、はいはい。(手を引いて)ココです。解ります?」
「あー、解りました。コレですね。んー、コレはコレとしか言いようがない。」

これまで目が見えているという事に甘んじて、言葉で伝えるということをこんなにも疎かにしてきていたのかと、自分の表現力の拙さに愕然とします。そもそも何かを見つけた時に、言葉どころか声が出てきません。こんなたどたどしい足取りでも、丸太橋を渡ったり階段を上り下りしたり、そこにある物を触って確認し合って、コミュニケーションの取り方を文字通り手探りしていると、そのうち初対面の人同士なのに強い連帯感が生まれてきます。普段なら有り得ないくらいに他の人と接近しています。知らない人に手を握られたり腕を捕まれたりしたら「なんだ? この人」と変な目で見てしまうのに、今はそれが嬉しいというか安心させてくれます。

「あ、そっちに何かありますよ。気をつけて」
「えっ、えっ!? 何があるの!?」
「嘘ですよ。何もありませ〜ん...って言ったら信じます?」

...なんてボケをしてみようと最初は思っていたのですがとてもそんな余裕はありません。他の人達の言葉を信じざるを得ないのです。自分には解らないのですから。こんな所に嘘つきがいたらこのグループは大混乱になってしまいます。「コイツは邪魔者だ」なんて思われたりして、置いて行かれたら自力ではどうしようもありません。そこにいる誰もが恐怖は暗闇ではなく偽情報から始まる疑心暗鬼だと、相手を信頼する事・相手から信頼される事のみをする事が光明なのだと気づいていたと思います。

1時間強のツアー(?)を終えて、お互いの姿を確認して、ちょっと感想を述べあってから解散になりました。個人的にはこの人達ともっとずっと一緒にいたい感じでした。目が見えていたからこそ見失っていたものがたくさんありました。目が見えない事は不便ではあるかも知れないけど全然不幸ではありませんでした。これなら、緑内障が進んで失明してもなんとかなるかな? と思いました。

「Dialog in the Dark」は9月12日までやっています。はっきり言ってこれはお勧めです。去年知人が私に強烈に勧めたのも解った気がしました。もしこれに興味が涌いた方がいたら、私は1人で行くかお互い少し時間をずらした回のチケットを取る事をお勧めします。知り合いと行くとどうしても知り合い同士でくっつこうとするからです。8人+ガイドの1人が1つになって進むには、知り合い同士でくっついて他の人とのコミュニケーションを軽んじるのはマイナスです。

...いや、見えた方が便利なんで視覚は失いたくないですけど。
 

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これまでに寄せられたコメント

私の次男が4年生のときに学校内ですが、
「目隠しをして歩いてみよう」というのをやりました。
(「総合的な学習」のひとつです。車椅子体験もありました)

2人一組で、一人が目隠しをして、もう一人が案内役です。

感想を聞いてみると
「怖かった!」でした。。。

やっぱり相手の声しか頼りにならなくて、普段は仲良くない子だったりして(爆)、
なかなか信用できなかったみたいです。


でも、こういう体験ってしておいたほうがよいのかな?

私は基本的に誰も信用しないから難しいだろうな…。。。

私がもし、目が見えなくなったら…ぜったい、外には出られないと思います…。。。


By きむ*にょんにょん : 2006年08月22日 20:51

わたし、ここが立ち上がった時に赤緑色弱ということをいいましたね。
もうひとつ目の障害が、夜盲症、早く言えば鳥目なのです。
夜になると暗いところは見えにくいでなく見えないです。今すんでるところ田舎ですから、電柱少ない、家の玄関の明かりだけが頼りのココは、わたしは夜は歩けません。懐中電灯もって歩くしかありません。
知らない人は、人影ぐらいは感じるでしょうというけれど、いえいえ、すれちがった時にエッそこにいたのという感じなのです。
今は家の前にセコムが入ってる会社が出来たので、例えば夜遅くタクシーで帰ってその会社のおかげで助かってたり・・・

ただ、映画が一人で見れないのが口惜しいのです。上映時間真っ暗ですからね。

By エメロン : 2006年08月22日 22:09

きむ*にょんにょんさん:
> でも、こういう体験ってしておいたほうがよいのかな?
> 私は基本的に誰も信用しないから難しいだろうな…
参加して損はないと思います。「基本的に誰も信用しない」を通せるか、新たな自分を発見するか、その辺にもちょっと興味はあったりして。

エメロンさん:
> もうひとつ目の障害が、夜盲症、早く言えば鳥目なのです。
以前、鳥目の方と一緒に仕事をしていた事があります。その方はご自身で車を運転して来られるので、打ち合わせは何がなんでも日暮れまでに終わらせ...じゃなかった、その方が日暮れまでに帰宅できるよう、時間に余裕を持って打ち合わせを終わらせなくてはならなかったので、何を決めるのにも進みが早かった記憶があります。

By tib : 2006年08月25日 13:41

ちょっと遅ればせのコメントですが・・・

目の再検査を控えているとの事、私も目には自信が無いので他人事ではありません。 人が目から得る情報は全体の80パーセントだそうですから、視力を失うことに対する不安はかなりおおきなものですよね。

それにしても「Dialog in the Dark」というイベントは興味深いですね。

>そこにいる誰もが恐怖は暗闇ではなく偽情報から始まる疑心暗鬼だと、相手を信頼する事・相手から信頼される事のみをする事が光明なのだと気づいていたと思います。

視力障害者のサッカー大会で見えているとしか思えないプレーをする選手や、全日本アンサンブルコンテストに参加して健常者グループに伍して金賞を受賞した盲学校の生徒さん達を紹介する番組を見たことがありますが、見えないことでかえって他の感覚が驚異的に研ぎ澄まされる人間の可能性の素晴らしさにはびっくりいたします。 お互いを信頼しあう事で持てる以上の力も発揮できるのでしょうね。  

逆に手話を使うことで聴覚障害者の方を信頼させて大金をだましとる事件もありました。 まさに信頼を逆手にとる卑劣な犯罪で許せないと思いました。

By おぱーる : 2006年09月01日 18:45

おぱーるさん:
> それにしても「Dialog in the Dark」というイベントは興味深いですね。
そうなんですよ。私も期待していた以上の発見がありました。もし今からでも行けるなら行ってみる事をおすすめします。今年がダメなら来年でも...。

> 信頼を逆手にとる卑劣な犯罪
「信じる者は救われずに騙される」という世の中ですからねぇ。

By tib : 2006年09月04日 02:51

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